夢のような恋だった
「だから、そこは絶対こっち!」
初めて1カ月が過ぎたころには、敬語などなくなり私と先輩は睨みあっていた。

「いや、絶対にこっちの方が映像が生きる」
何度となくそんなぶつかり合いをする。

「はあ、咲良いったん休憩」
そういう先輩に私も大きく息を吐くと、机に頭を埋めた。

「どうした?咲良」
そんな私に心配そうな声が降ってきて、私は慌てて顔を上げた。

「違うの、こんなに充実して何かに向き合えたのが初めてで、すごく楽しい」
それだけを言うと、恥ずかしくなって私は真っ赤な太陽が沈んでいく西の空を見た。

「ねえ、きれいな赤……」
その言葉は最後まで言うことなく、音もなく消えた。
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