サイコパスくんと自殺少女

(僕は普通じゃない...
そう初めて思ったのは小学5年生の時だった。
皆から好かれていた友達の急な転校
けど僕には何も思う所はなかった。
友達を思い泣く子を見て不思議だなと首を傾げる有り様だ
べつに理解が出来ていない訳ではなかった逆に言えば人より変に理解をし過ぎていたのだ
友達はあくまで他の小学校へ行くだけであって怪我をしたわけでもこの世から消えるわけでもない、連絡を取りたかったら番号を教えて貰えばいいし会いたかったら住所を教えてもらえばいい、むしろ今日皆にお別れパーティーみたいな物を開いてもらい本人は楽しそうではないか
悲しむ意味が分からない。

と頭の中で論理を組み上げていた。
今思えばそれが一種のサイコパス的考えを既に持っていたのだと僕は理解する。)


【現在 高校2年生】


(そんな僕の名前は桜井 悟(サクライ サトル)このクラスでは中の上のポジションでよくしゃべる明るいキャラで通している。
もちろんこれは表だけの演出である。
サイコパスというのは一見すると無口で何を考えているか分からないというイメージを持たれるが実はよくしゃべり社交的な人が多いのだ

そして)

友人『さーとる!放課後この面子でカラオケ行こうって話ししてんだけど悟も行こうぜ!』

悟はちらっと面子を確認する

悟『お、いいねー...あ!ごめーん今日も家の手伝いあるんだ!』

(始めにフットワークが軽く行く素振りを見せてから思い出した様に口実を口にする。
これが相手を不快にさせない自然な断り方である)

友人『あーそっかお前の家畳屋だっけ?もう跡継ぎ的な感じ?』

(無論手伝いなど嘘だ、ただ実家が家業を意図なんでいるのは本当だからそれを口実に利用させてもらっている。)

悟『あはは...俺は継ぐ気は無いけど親が急がしそうにしてっからさ、ごめんな!また声かけてくれたら嬉しいぜ』

友人『おぅ!また今度な!』

(断った本当の理由は面子もあるが僕は基本的に突然割り込んでくる予定は却下する
今日1日の自分の楽しみ方は既に決めているそれより楽しいものでない限りは食い付きはしない
無論カラオケやボーリング、ゲームセンターなど多数人の遊技に興じたい時は自ら声をかけ誘う
だから付き合いが悪いイメージも友人からは持たれない)

放課後のチャイムが鳴り響く

悟『さて帰るか』ボソッ

校門へと向かう悟

ふと隣を見るとソフトテニス部の練習風景が目に入る

悟『熱心だね~』

(この学校の部活動は強制では無い、だから生徒の約半分はバイト組だ僕は実家の家業という特権を大いに生かし忙しいふりをする有意義な帰宅部ってことだ)

悟は校門前で立ち止まり我が校舎を背に振り返る

(フフフッこれが僕にとっての有意義ハッピーライフ!)

悟『ふははは...』ボソ

校門入り口で立ち止まり不気味に微笑む悟を見て周りにいる生徒がざわつく

悟は即周りの目線に気づき顔を真顔へと修正する

(ん//恥ずかしい!やってしまった!僕は自分の事をよく知っているだからこそ分かる自分が今他人からどう見られているのかがそして僕は隠れ中二病で尚自分好きのナルシストだということも)

悟『ふぅ~...さて帰るか』

悟は斜め上を見上げ風景に浸る
足を校門側へ運ばせようと振り向くその時だった

悟『ん?』

校門側へ振り向いた悟は何か違和感を感じまたすぐ校舎側へと振り返る

(なんだ?今校舎の上の辺りに何かいたぞ?)

悟は目を細めじっくりと見てみる

悟『ふぁ?』

そこには屋上の金網を登ろうとしている女子生徒の姿あった
と同時に悟の足は即座に校舎へ向かい走り出していた
颯爽と校舎へ入り下駄箱をスルーすると靴のまま廊下へと足を踏み入れる
周りの生徒は全速力の悟を不思議そうに目で追う

悟『ハァハァ...ハァ..ハァ....』

(あの場では気づいた人は僕以外いない本来ならばその場で指をさし周りの生徒へ知らせ教師や警察に任せるのが彼女の命を救うもっとも効率の良い方法だろう、だが僕はそんな一般的な展開望んではいない!自殺生徒を助けに行くだなんてアニメやドラマみたいでテンション上がるじゃねーか!あーアドレナリンが出るぅ!こんな快感を他の奴に奪われてたまるか!彼女の命など正直どうでもいい今こうしてザ・正義の為にと言う大義名分がたまらない!まぁもしも助けられたなら彼女に命の恩人として今後それをネタに学生の間は利用させてもらうか)

悟は階段をかけ上がりながらまたしても不気味に微笑む

屋上へ繋がる階段を上がると目の前には半開きになっている扉が現れる

ッバン!!

悟『ハァハァハァ..ハァハァ.......え?』

悟の目に飛び込んで来たのは金網に大の字になってへばり付いている女子高校だ

(まるで網戸に爪が引っ掛かって取れなくなった猫みたいだな...)

悟は彼女がこちらにまだ気づいてないと踏み気配を消して近寄る

大の字の彼女へと目の前まで迫った

(この光景は、シュールだな)

『...あの?』

悟『っふぁ!!』

不意に彼女に話し掛けられ悟は取り乱す

悟『気づいてたのかよ!』

『はい、私人の殺気には敏感なんです。』

(殺気...)

悟『よ、よく気づいたな』

(こいつにとっては他人=敵なのか?)

『で、あのお願いがあります。』

悟『ん?なんだ?』

『金網の向こう側まで行きたいので下から押して持ち上げて頂けませんか?』

悟『断る』

悟が食いぎみに答えた後少し間が空く

『...ではここから下ろして頂けませんか?』

悟『OK 』

悟は手を前に出し人を受け止める体勢を作る

悟『さぁ思い切って手を放せ受け止めるから』

『え?そういう形なんですか?』

悟『こういう形だ!あ、パンツ見えただの面倒な事は言うなよ?』

『大丈夫です短パン掃いてますから』

悟『...そうか!よし来い』

彼女は怖がりながらも両手を放し飛び降りた

『きゃー!!』

悟『うわっっ!!』

ドーン!!

『痛!いっててて...え?あの、なんで受け止めてくれなかったんですか?』

彼女はお尻から地面へ落ち苦痛の表情を浮かべている悟は1.5メートルほど後ろへ一歩後退りをしていた。

悟『あーごめん君の体系的にまぁ40キロ後半くらいかなって思いその重みが落下して来るのをいざ受け止めれるのか?と頭で考えてる内につい反射的に避けてしまってね 』

『ぅ"...まぁ貴方が怪我をする可能性もありましたし私は痛みに慣れてますから..ゴホッ...正しい判断でしょう』

(痛みに慣れてるってやはり原因は虐めか)

悟『そうなのか?まぁ悪かったな』

彼女は振り返りそこで初めて悟と面と向かって顔を合わせる
メガネ&三つ編みのまさしく絵に描いたような暗い少女がそこにはいた。

(暗い!暗すぎる!なんだこの子は?)

彼女は立ち上がりスカートの汚れを叩く

『いいえ...まぁ貴方には期待してますので』

彼女の目付きが変わる

悟『?』

『ありがとう御座います。佐藤さん』

と思いきや彼女は急に笑顔になる

悟『桜井です。』

『あー桜井サトシさん』

悟『おしい桜井 悟だ!って一体何なんだよ!』

彼女は自分のスマホを取り出し何かを打ち始める

『完了です。こちらを見て下さい。』

彼女はスマホの画面を悟に向ける
そこには【私はこの人たちの非道な行いにより結果死を選びました。】その下に何人かの名前が記載され最後に桜井 悟と書かれていた。

悟『え!?』

『これがどういう意味か貴方なら分かりますよね?』

そう言うと彼女は不気味に微笑む

その姿に悟の背筋が凍る

(一見すると何でもない事にも思えるがこれは非常にまずいな)

『うふふその顔は理解したようですね、そうですもしも私が死んだらこのスマホのメモが表に流出しいくら関係無いと言い張っても世間は貴方をどう見るのでしょうね』

悟『ぅ"...僕以外の名前の奴らは本当にお前を虐めてた奴等だろ?お前が死んだら僕は別の場所でお前を苦しめた人物としてレッテルを貼られるってことか、しかも最悪な事に僕にはそれを弁護してくれる味方もいないって訳か』

『素晴らしい洞察力です。さすが偽者さん』

悟『偽者?』

『はい貴方は私を本気で助けようとはしていませんでした。ただ面白そうな臭いがしたから近寄って来ただけのただの自己中さんって事です。』

二人の間に風か靡く

(な、なんだこの子...)

悟は心をここまで読まれたことに動揺を隠せない

悟『どうしてそう思う?』

『私はあらゆる方法で過去4回ほど自殺を試みたのですが残念ながらその度に誰かに止められ命を救われてしまいました。つまり本気で死のうとしたからこそ分かるんです。本気で救おうとする人の気持ちが』

(本気か、なるほどこの17年間うわべだけで渡り歩いて来た僕じゃ浅はかだったってわけだ一つ為になったな)

『さてここからが本題です。桜井 悟さん貴方には私の悲願を叶えるため協力して頂きます。もし達成したのならば私のスマホから貴方の名前を削除し私自身も自殺をやめましょう』

悟『それは脅迫ってやつか?』

(隙を見てあのスマホを奪うか?いやそんなことしても他の物に書かれれば同じことか)

悟『で、具体的には僕は何をすればいいんだ?』

『ご理解ありがとう御座います。簡単です。今お見せしたスマホに書かれている貴方以外の人物全員に対し私の変わりに復讐をして頂きたいのです。』

悟『復讐?例えば何をすればいいんだ?』

『それはお任せ致します。私の憎しみが晴れ満足出来ればクリアです。』

悟『投げやりかよそんなゲームみたいにしやがって』

『いいえ貴方の流儀に沿っただけです。』

悟『流儀?』

空模様が険しくなり雨が降る直前の様な嫌に生暖かい風が靡く

『だって貴方は...』


【桜井 悟の部屋】


バサッ!!

悟は急に自分の寝ていた布団を蹴りあげ飛び起きる

悟『ハァーハァーハァーハァー...』

目覚ましを見る

-3:15-

悟は頭を押さえ今日の出来事を思い出す。

悟『あいつ...』


【回想 学校屋上】


『だって貴方は...サイコパスでしょ?』

悟『え?...なぜ?なぜ分かるんだお前!』

雨がぱらつき始め悟の頬を伝う

『さぁ校舎に入りましょう桜井さん』

そう言うと彼女は屋上の入り口へと歩いて行く

悟『おい!』

悟の呼び掛けには応じはしなかった。

『早く来てください。扉を閉めますので』

悟『クソが』

悟も渋々校舎へ入る

ガチャ!!

彼女は屋上の鍵を取り出し施錠する。

悟『なんでお前屋上の鍵なんて持っているんだ?』

『天文部員だからです。今活動しているのは私だけですが』

悟『この学校で一番持っていては危険な人物によく教師も渡したもんだ、で?活動ってのは自殺をすることか?』

『そうですね間違ってはいません。目的はそこにありました。あとはお昼など虐められないよう逃げこむ為の場所とこの屋上からの人間観察といったところでしょうか』

悟『ふーん、金網のド真ん中で大の字になっていたのも一応自殺の活動中だったってわけか』

『あれは登り始めたのは良かったのですが途中力尽きてしまい上へと進めなくなり、かと言って下にも降りるのが怖く結果あのような形になってしまっただけです。私高所恐怖障なんです。』

悟『高所恐怖障の奴がなんで飛び降りを選ぶんだよっ』

『自殺と言ったら飛び降りです。これは自殺少女としてのプライドです。』キラ

彼女は眼鏡に手を添え決めポーズを取る


悟『自殺少女ね...』ボソ

『では桜井さん明日お昼にここへまた来て下さい。ターゲットの詳しい詳細を教え致します。では』

彼女は階段を降りて行く

悟『待て!』

『ん?まだ何か?』

悟『これからお前の元で働こうってのにまだ名前すら聞いて無いぞ』

『柏[カシワ]と申します。では』

柏は軽くお辞儀をし去って行った。


【回想 終了】


辺りはシーンとし時計の音だけが響き渡る
悟はベッドの上でぼーっと座り尽くしていた

悟『柏...名字か名前かも分からねぇクソ!あいつが生きている限り僕の学園生活は休まらない、かと言ってあいつが死ねばもっとでかい爆弾を落とされる』

悟は頭を抱え込み悩む

悟(どうする?柏を眠らせて捕まえ何処か人けのない場所で監禁でもするか?精神的に究極まで追い込み喋れないレベルの廃人にしてやれば...そうだ元々虐められていたのなら僕は疑われない...)

悟は不気味な表情を浮かべる

悟『だめだ!あまりにもリスクが高い!何より柏に精神的な追い込みは効果がない!...くそっ八方塞がりだ』

悟は勢いよくベッドへと横たわる
その反動で悟のスマホがベッドから落ち待ち受け画面の光が薄暗く電灯した

悟はスマホをベッドから手を伸ばし拾いしばらく見つめる

柏にスマホを向けられている時を思い返した。

悟『クソ... ....ん?待てよ』


【学校お昼 屋上入り口前】


柏が既に待っている

悟『...お、お待たせ致しました。』


《後編へ続く》
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop