ボードウォークの恋人たち
「差別じゃなくて区別」

「詩音はスタイル抜群の美人だからオッケーで私は標準体型の童顔でお酒が似合わないとか酔った姿も可愛くないとかそういう意味？」

「くだらねーこと言うのはこの口か」

はっと薄ら笑いを浮かべたリュウさんが手を伸ばして私の右頬をむぎゅっと引っ張る。

んぎゃっ
私の口から色気のいの字もない声が出てしまう。

「いつまでたってもクソガキか」リョウさんが呆れたように吐き出した。


この乱暴な口調のバーテンダーのリョウさんは私と詩音の師匠のような人で私たちはいつまでたっても彼と飼い主と犬？主人とメイド？みたいな関係で結ばれている。

バーテンダーとして詩音の祖母に雇われていたリョウさんは私たちの教育係みたいなものだった。
お酒が飲める年齢になったと同時に詩音の祖母の葉さんに言われたのが「リョウの許可なくしてお酒を飲むべからず」

要するに葉さんはヒヨコの私たちがお酒の席で失敗することを心配してくれたからなのだけれど、リョウさんはお酒の飲み方だけじゃなくて大人としてのマナーなども含めて立ち居振る舞いを事ある毎に私たちに叩きこんでくれた。

おかげで自分の酒量だけでなくいろいろなことも知ることができたのだけれど。
因みに、リョウさんがいない場所での飲酒が許されたのは教えを乞うてから詩音は３ヶ月後、私に至っては半年後だった・・・。

私たちには少々Ｓっ気があるリョウさんだけど、バーテンダーとしての表の顔は実にきめ細やかな気配りができる大人の男性だ。

見た目も素晴らしい。昨夜見た刑事ドラマの主演男優なんかよりずっとワイルドなイケメン。
アラフィフというその年齢もいいのだろうか、あの顔と声で癒されたいというリョウさん目当てに通っている女性客もいるくらいだから。
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