ボードウォークの恋人たち
それからすぐおとなしくタクシーで帰宅してシャワーを浴び、ベッドに潜り込んだ。

今夜ハルは二ノ宮総合病院の当直でいない。
だから私も気兼ねなく遅い時間まで外出ができたし顔を合わせずに済んだけど、明日は珍しくハルが夕方に帰宅する予定になっている。
このところずっと忙しくてほとんど会っていなかったから久しぶりにしっかりと顔を合わせると思うと憂鬱な気持ちになる。

詩音のアトリエか。

そこはさっき聞いた限り誰が見ても高級マンションでセキュリティに問題はない。だからセキュリティを問題に引越しに反対されることはないはず。
金銭的な話なら敷金礼金はかからないから必要なのは引っ越し代くらい。だったら私の貯金でもなんとかなる。そもそもここに私の家具家電の類はないしあるのはクローゼットの衣類や雑貨程度。

詩音のアトリエのリノベーションが終わったら、ハルにここを出て行く話をしよう。
ありがとう、お世話になりましたって言えばいい。
物騒な事件から守ってくれてありがとう、次の安全な住まいを確保できたから出て行きます。婚約者のふりをする必要はないしハルはもう自由だよって。

何度も寝返りを打ってやっと眠りに落ちて見た夢はーーー香水臭い蝶々が払っても払っても纏わりつく夢で最悪な気分で朝を迎えた。
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