ボードウォークの恋人たち
「水音、ちゃんと聞けって」

しつこい!
「もう、いいって言ってるじゃない!」

思わず声を荒らげてハルの手を振り払った。

「ハルに結婚したいと思うような恋人ができてここに連れてくるんじゃなければ私には関係ない。ハルがどこで何人の女の人と付き合ってても、どこかに本命がいても」

「水音!」

汚い感情をさらけ出して声を上げてしまえばそれを遮るようにハルも大声を出した。
ハルの勢いにびくり、と身体を揺らすとそれに気が付いたハルが「ゴメン」と小さく謝ってきた。

「何人も女がいるとか、どこかに本命がいるとか、そんなことないから」
困ったような表情でハルが私を見つめる。その声はいつもの魔王のものじゃなくて頼りなさげだ。

「・・・あと3週間は忙しくてなかなか顔を合わられない日が続くけど、俺の帰ってくる家はここだけだし、水音の家もここだから」

それだけ言うとハルは掴んでいた私の腕を離した。

「だから出て行くなんて考えるな。絶対に許さないから」

一瞬のうちに抱きしめられ唇が重なりすぐに離れていった。
なっ・・・。

突き飛ばす暇も怒鳴る暇もなく抱きしめられキスされ呆然と玄関に立ち尽くす私を置いてハルは「おやすみ」と自分の部屋へと行ってしまった。

心臓がバクバクと拍動し、掠るように触れ合った唇も今になって熱くなってきた。

ーーー妹のようなものにキスなんてしないでほしい。



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