ボードウォークの恋人たち
それから二人にに両側から抱えられるようにしてカフェを出てエレベーターに向かった。
何だか無性に気分が悪い。頭はガンガンするし足はふわふわする。
そんな気がするだけで実際に身体がおかしいわけじゃない、要はメンタルの問題なんだと自覚がある。
ハルの女性問題に直面する度に感じる嫌な感覚、ガツンっとメンタル削いでくるあの感覚。

知りたくなかったし、ハルの違和感に気が付きたくなかった。
知っておくべきことではあったと思うけど、ハルが求めたのが二ノ宮の血だったとはショックでしかない。

「水ちゃん」
拳を握りしめヨロヨロ歩く私に浜さんが声をかけてきたけれど、はいと返事をしようと口を開いたのに思うように声が出てくれない。

「私、舘野先生のことはよく知らないけれどね」と浜さんが話し始めた。

「逆玉を狙う人には見えないし、水ちゃんをキープしながら本命を作るような感じには見えなかったな。私がそう見えただけで実際はわからないから言わせてもらうけど、舘野先生とちゃんと話はした方が良いよ。誤解なら早く解いた方がいいし、あの元山先生のことだってきちんと伝えた方がいいわ」

声を出す元気もなくて首を縦に振るけど、浜さんは納得せず私の反応を見て怪しいと思ったらしい。
「ほら、しっかりしなさい!」

「はい・・・」

やる気のない返事に浜さんはため息をつき、望海さんは鼻息を荒くした。

「早く舘野先生に言った方が良いって絶対!だいたい水ちゃんが本命じゃないなんてあり得ないし」

「え、ああ、はい、うーん・・・」

私は微妙な返事をするしかなかった。
本命って誰なんだろう。

二ノ宮総合病院の院長になることが目的で私と結婚したいのなら私はいい駒だ。昔から知り合いだった私には兄と妹のような親愛の情だってあるだろうし、それなりにうまくいくだろう。

男女間の純粋な愛情というのなら確かに私は本命じゃない。
誕生日の電話の相手がハルの本命ーーなのかな。
< 112 / 189 >

この作品をシェア

pagetop