ボードウォークの恋人たち
夕飯を作っていると「ただいま。うん、旨そうな匂い」と嬉しそうに顔を緩めたハルが帰宅した。

「お帰り。お疲れさま」
久し振りに顔を合わせたハルは明らかに疲れている。
前回見かけたのは４日前の朝。

誕生日の頃のように目の下にクマがあるし、普段はきっちりセットしている髪も少し乱れている。

「すぐに食べたいけど、先にシャワー浴びてくるわ。水音は先に食べてていいからな」

よれよれのハルはすぐにバスルームに向かってしまい「待って」とも言えず私は出鼻を挫かれた。

言いたいことがあるけどハルのあんな姿を見たら今は言いにくい。

結局ハルの夕飯が終わるまで何も言い出せず。
だって、ハルが本当に美味しそうに食べていたから。

「旨い。肉も固すぎず柔らかすぎないし、甘酢あんの酸っぱさもちょうどいいよ。さすが水音」
私の作った料理を頬張りながらそんなこと言われたら食べながら重たい話を切り出すことができない。

仕方がない食後にしようと温かいお茶を淹れた。

結局余ったら明日のお弁当のおかずにしようと多めに作った分までハルの胃袋に収まってしまった。

「ここんところくなもの食ってなかったから水音の料理が身体にしみるな」

「そうなの？ここ数日何食べてたの」

「んー、コンビニのおむすびとか売店の焼きそばパンとか。忙しくていろいろ時間なかったから」

見るからによれよれな感じから大変な生活をしていたことは予想できたものの昼にあの女医から言われたことは私の中でずっと引っ掛かっている。

「ハル、あのね、」
食後に淹れ直したお茶を飲んでいるハルにやっとのことで切り出した。

「ああ。俺も水音に話があるからリビングに移動しないか」
ハルは二人分のお茶を持ってさっさと行ってしまう。

「あ、うん」
強引な仕草に違和感を感じつつもおとなしく従いリビングのソファーに腰をかけた。
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