ボードウォークの恋人たち
入籍。しかも昨日とか。
「おめでとうございます。これからはずっと一緒ですね」

「いえ、今回は彼女が日本で活動をするための前準備の一時帰国なんです。彼女はまた向こうに戻っていろいろきちんと整理してから完全に帰国することになってます。本当はそれから籍を入れようと思っていたんですが、まあちょっと早くてもいいかと・・ですね」

ああそういう感じなんだ。

「完全帰国までまた離れ離れじゃお寂しいですねぇ」

「いいえ、たかが婚姻届なんですけど、これが大きな一歩で」

なっと大江さんと彼女が顔を見合わせ頷いている。
ラブラブだなぁ。

「急に決めたので各種機関に届出とか連絡とか、いろいろで忙しくて。彼女のこの一時帰国中は全部雑用に潰されることになりそうなんですけど、彼女が行ってしまっても式場や新居を探したりいろいろ動かないといけないんで寂しいなんていってる暇がない位だと思いますよ」

「それはそれは」
大変そうだなと思う。でも忙しい方が良いのか。

「それがいやなら彼女が完全に帰国してから入籍すればよかったんですが、まぁ…」
「私が待てなかったんです」

奥さんになったひとみさんが恥ずかしそうに頬を染めて口を開いた。

「二ノ宮さんとのお見合いの話がなくても本当はいつも不安だったんです。彼にいつまで待ってもらえるのかとか日本でいい出会いがあって好きな人ができちゃうんじゃないかとか」

ちょっとわかる。ひとみさんのその気持ち。

「だから今すぐ結婚してって言っちゃって」
両手で頬を挟んで自分で言って自分で照れている。

…かわいい。私より年上だけど、とても可愛らしい。
大江さんはそんな彼女の頭にぽんっと手をおいて蕩けそうな顔をした。

幸せそうなそんな二人の姿を眺めていて、私の胸がまたきりきりと痛み出す。
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