ボードウォークの恋人たち
「－－－で、昨日何があった」

ピりつく空気を纏った腕組みのリュウさんが怖い。

この人に何にもない、とごまかせるはずもない。

「師匠、勘弁してください。自分の中で整理が付いていないのでお話しできません」

真っ直ぐ言い返すと
「このバカが」
またげんこつが落ちてきた。

「痛ったー！マジで痛いっ」

目から星は出なかったけど、頭がじんじんする。両手で頭を抱えて唸っていると隣からクスクス笑いが聞こえてきた。

「リュウったら昨日水から音ちゃんと連絡取れないってずいぶん心配してたから、そのくらい勘弁してあげて」
いつの間にか女優の早川琴さんが隣にいた。
琴さんはすらりとした身体に切れ長の瞳、見た目はクールビューティーなリュウさんの恋人だ。

「リュウも心配してたって素直に言えばいいのに」

リュウさんはちっと舌打ちして「琴」と怖い顔をした。
私がチラリとリュウさんの顔を見ると気まずげに視線をそらされる。

「ごめんなさい。心配してくれてありがとう」
目頭が熱くなりリュウさんに両手を合わせた。

ちっとまた舌打ちが聞こえたと思ったら次の瞬間リュウさんにかき回すように頭が撫でられ、琴さんが飛びついてきて「かわいいっ」ってハグされた。

心配してくれる人がいるってありがたい。
ただ扱いがちょっとペットっぽいような気がしないでもないけど。
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