ボードウォークの恋人たち
「私もう25ですけど。この間なんてお見合いもしたし」

「そうことじゃない。だから水音は子どもだというんだ。」

ムッとして「ひどい」と言い返していると

「ね、みーちゃん」琴さんにつんつんっと肘をつつかれた。琴さんは私とリョウさんの言い合いには興味がない様子でスマホを指差した。

「この舘野博士ってもしかしてみーちゃんの”ハル”？」

さっきからずっとスマホをいじっていた琴さんが私に画面を向けてくる。
見せられた画面には確かにハルがいた。
外国人らしき男性とスーツ姿のハルが笑顔で握手をしている。

「学会発表成功したみたいね。私には何のことかよくわからないけど、研究結果が国内外に高く評価されているって」

そっか、よかった。ハルの研究が認められたんだ。
休日も睡眠時間も削ってあんなに毎日頑張っていたし。
ほっとすると同時に、あの女の人の姿が脳裏に浮かんできて私の心はざわざわと波立ってくる。
彼女との共同研究なんだよね。わかってはいたけど、気持ちは上がらない。

「ふうん、彼がハルね」
琴さんはスワイプしたりダブルタッチしたりして学会でのハルの様子が映った画像を見ている。

琴さんがあまりに熱心に見ているから気になって覗き込んで・・・後悔した。
画面には数人の男女が笑顔で賛辞に応えて手を挙げているような画像。
胸にお揃いのポケットチーフを飾ったスーツ姿で写真の真ん中で仲良く並んでいる男女は
ーーーハルと彼女だ。

大の大人がペアのものをって・・・。
ハルって本命にはそんな事するタイプだったのか。

はぁーっと大きくため息をついて今見た画像を追い払うように頭を振った。
もう帰って寝よ。

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