ボードウォークの恋人たち
程よく身体が沈み込むマットレスはハルのマンションにあったものと似てる。
ホテルのパリッと糊の効いたシーツも好きだけど、ハルが準備してくれていた小さなピンクの花がアクセントになっていた肌触りの柔らかいシーツの方が好き。

評判のアメニティのバスルームグッズはどれも高級品だけど、ハルのマンションのボディソープの方が好き。

今まで何人かの男の人に声をかけてもらったり、数人お付き合いした人もいたけれど、やっぱりハルの方が好き。
ハルよりも好きになれなくてお付き合いが長続きした相手は現れなかった。

私の心の中にはずっーとハルがいた。
私はハルが好き。


ーーただ、私の中ではハルが好きという気持ちとハルと一緒にいたいという気持ちが結び付いてはいない。

ハルの女性関係が私の心にストップをかける。

近くにいたら見たくないものまで見えてしまう。
今回だってそう。

私はハルの近くにいただけ。
それでもあのカスミ先生は言いがかりをつけてくるし、私だけじゃなくて望海さんや浜さんとか一緒にいる人にまで迷惑をかける。
メンドクサイことにこれからだって第二第三のカスミ先生は現れるだろう。

それと、帰国してから女性の影がなかったと思っていたのに実は本命彼女がいたハル。
留学中も一緒にいて帰国後も一緒にいるのならそちらの方と暮らせばいいのでは？友人の妹なんかで家族ごっこするよりは本命と結婚して本物の家庭を持つべきだ、と思う。
正直今回のハルの裏切りは大きなショックだった。

今のハル程の実力があれば私を妻にしなくても二ノ宮病院の院長の椅子の一つや二つ難なく手に入れることができるだろうからもう私に拘る意味もない。


ーーー私はこのままハルの元を離れよう。
ハルの近くでハルの本当の姿を知ってしまうのが辛い。

離れたところからハルへの想いが消えてなくなるまでそっと温めて過ごそう。



明日は晴れるかな。






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