ボードウォークの恋人たち

翌日のふたば台病院ではあちこちでハルのことが噂されていた。
私までおめでとうと言われる始末。作り笑顔で切り抜けているけれど、そろそろ顔の筋肉がひきつってきて痛い。
それだけハルの研究は大きく評価され賞賛を受けていた。

その上、あの見た目だから更に評判がよくてあちこちの研究者や海外の大学の関係者、マスコミや学会関連の記者に囲まれているらしい。

昨日も今日も昼は学会、夜はパーティーが組まれている。明日が最終日でその後は大学内の打ち上げもあるし、とにかくハルは身動きがとれないはず。
その後もマスコミ対応や雑用に追われて忙しいだろうからおそらく私のことなど構っている時間はないだろう。

ハルはもう二ノ宮の娘という私の存在などなくてもどこの病院、大学病院、大学の研究室が欲しがる人材になった。
本命彼女のいる彼にとって私はただの親友の妹。二ノ宮グループの病院の院長の座に拘らなければ不要な存在。

ほっとしたような悲しいような。


あれから詩音から連絡が入り、散々叱られた後、あと三日で帰国するからアトリエに来るようにと言われた。改修工事が終わって週明けから入居できるようになったらしい。

詩音の夫のタツヤも私の居候に賛成してくれているのだとか。
一人で制作に没頭するとろくに食事をとらないような生活をする詩音の世話を私に期待しているんだと思うけど。
それでもいい、やれることはやるし、本当にありがたい。
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