ボードウォークの恋人たち

寝酒をしても眠りに落ちていくことはなく、ずっと浅い眠りのまま朝を迎えてしまった。

頭がガンガンする・・・。
夕方からの仕事時間までにはまだ間があると思って目を閉じてももう眠りの波はやって来てくれなくて、私は諦めてベッドを出た。

詩音の帰国まであと12時間。

今夜わたしが夜勤をしている間に詩音は帰ってくる予定だ。
そして明日の昼からわたしは詩音のアトリエの管理人という名の居候生活がはじまる。

条件はハルのマンションにいるときとさほど変わらない。詩音は旦那と暮らす自宅があるから、創作意欲が溢れて止まらないというトランス状態にならなければ、アトリエには泊まらない。

私に課せられているのは詩音の仕事の邪魔にならない程度の掃除や制作中に何かとサボりがちな詩音のご飯の世話、買い物とか雑務などなど。
あと、休憩時間の話し相手。

詩音のアトリエ居候生活も私にお金が貯まるまでの間だけだ。ハルのマンションにお世話になっている間に少しづつ貯金ができていたこともあってそう長いことにはならないだろう。
あとは私のお給料の範囲で暮らせる住まいを探さないと。

いっそのこと父を説得して東京を離れて地方の病院で働こうか。
そうすれば少なくとも家賃部分の出費を抑えることができるはず。



・・・お腹空いた。何か食べに行こう。

私はホテルに隣接するショッピングモールのカフェに向かった。
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