ボードウォークの恋人たち

すぐさまタクシーに乗り二ノ宮総合病院に向かう。

今日は学会が開催されてたホテル学会に参加できなかったコメディカルと業者向けの講演会がありハルも講師の一人だったのだという。
それに参加していた大江さんが講演会中に起こった騒ぎを知って私に連絡してきてくれたのだ。

ハルの容態を考えると心配で心が縮み寒気と同時に震えがする。
ハルに何かあったらどうしよう。頭を打って意識がないだなんて、まさか脳に出血ダメージが。
急性硬膜下血腫
頭蓋骨骨折
脳挫傷
どんどん不安な病名が頭に浮かび私の胸を締め付けていく。

ハル、ハル、ハル、どうか無事でいて。
神さま、ハルを助けて。

私はタクシーの中でずっと両手を組んで神に祈った。
昨夜の彼の様子を思い出して更に胸がつまる。
話も聞かないで逃げ出しちゃった。ハルは疲れていたのだろう、ずいぶん顔色が悪かった。

病院に着いて救急外来の受付に飛び込みハルの居場所を教えてもらう。
ハルは既に処置を終え救急外来の処置室から二階にある個室に移動していた。

一段飛ばしで階段を駆け上がり、ドキドキしながらナースステーションの先にある個室へと足早に向かう。

受付で教えてもらった210号のネームプレートは真っ白なまま。名前が書かれていなかったけれど、扉は開いていてカーテンだけが引かれていた。

廊下の外からでも聞こえる話し声。
病室の中から数人の声がして何か揉めているようにも聞こえる。

私は迷わず部屋の中に入った。

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