ボードウォークの恋人たち
安心してへなへなと床に座り込んだ。

「悪かったな。---心配した?」

「当ったり前でしょうがっ!」
へらりと嬉しそうに笑うハルに腹が立ってハルが横たわっている布団をぼんっと叩いた。

「痛ぇ」と小さく悲鳴が出て慌てて「ごめんっ」と謝る。もしかして布団に隠れた場所も大ケガしてるのかも。どうしよう、叩いちゃった。

「もしかして他も打撲とか」

「太もも辺りは打撲したな。他は多分大丈夫だ」

ごめんっ。私の顔色がちょっと青くなったのを見てハルが「大丈夫だから」と笑った。

「何でこんなことに」

「今日の講演会が終わった後、次の予定まで時間がないからって大学から迎えが来て急いで戻ろうとしたら沙乃がーーー」

沙乃さん・・・
彼女はやっぱりずっとハルと一緒にいたんだ。

「アイツが階段で足を滑らせたから咄嗟に手を伸ばして抱え込んだんだけど、着地に失敗したんだ。カッコ悪いよな、左手突いて骨折するし。でも、アイツがガチャガチャした髪飾りなんて付けてなきゃ俺の頭は切れなかったのに」
ハルはチッと舌打ちをした。

「でも、そのおかげで水音がここに来てくれたんだからアイツも少しは役に立ったってことか」

あ、あれ?ニヤリとしたハルの笑みがさっきまでのと違ってちょっと黒い?

「ごめん、私ちょっと混乱してる」

「水音。今度こそいろいろお前に話したいことがあるんだ。あの母親のこと、諸川さんのこと、沙乃のこと。うちの親父や二ノ宮のおじさんのこと」

逃がさないとばかりに私の手をしっかり握ったハルが今日一番真面目な顔をした。
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