ボードウォークの恋人たち
二ノ宮グループは独自の奨学金制度を持っている。
奨学金は卒業後一定の期間二ノ宮グループのもつ病院施設で働いてもらうことが条件となるものの返済義務はない。

その他にも返済義務はあるが進路の指定がないものなどいろいろなパターンが用意されていた。

結局、何度も父親と話し合うも平行線のままだったハルは二ノ宮グループの奨学金制度を使うことを決めた。

そして医師になること、実の父親から自立することを決めたハルは高校生ながらアルバイトを始めた。

きっかけは同じクラスの女子の言葉だった。
「舘野って教えるのうまいよね。うちの妹の家庭教師が急にやめちゃって困ってるから来てくれない?その大学生のカテキョーと同じ額のバイト料を出すように親に頼むからさ」

高校生のハルに家庭教師のバイト料は魅力的だった。

そして、女子高校生も自宅にあの”学校一のイケメン舘野治臣”が来てくれるのは相当な魅力だった。

ハルは容姿端麗、人あたりもよく生徒会副会長で父親は弁護士、彼本人の成績も優秀ときたら彼女の親も文句のつけようがなかったのだろう。
それからハルのバイトの噂を聞きつけた女子高生の間でハルの奪い合いが始まり、時給が跳ね上がっていった。

ハルを雇う権利を得た女子高生は意気揚々と学校帰りにハルを自宅に連れ帰ることができる。

実際は彼女の弟妹の家庭教師のためなのだけど、ハルとの二人で下校することはデートのように感じていたのだろう。

それからハルは自身の受験勉強と同時にアルバイトをしながら無事に医大に入学することができた。


二ノ宮グループの奨学金の援助を受けながらアルバイトを続けていたある日突然、ハルの元に別居してから疎遠になっていた母親から連絡が来た。

母は再婚するから一度新しい家族に会って欲しいと言った。

実の父親とは同じ家に住みながらもほとんど顔を合わせることはなく、最後に会話をしたのがいつだったかも思い出せない。
そんな状況で母から連絡が来たのだった。
何を今さらという思いがないわけでもなかったけれど、実の母親からのお願いを断ることに気がひけた。一度顔を見るだけ、少し興味もあってハルは顔合わせに同意した。

だが顔を合わせて驚いた。
母が再婚する相手の連れ子は同じ医大の同級生、諸川沙乃だったのだ。

同級生でありながらそれまで接点はなく、話をしたことがない相手だったが彼女はハルの義理の妹になったのだった。
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