ボードウォークの恋人たち
暁人は大学院、俺は医学部卒業を前に久しぶりに2人でべろべろになるまで飲んで二ノ宮の家に帰った日のこと。
夜中だというのに水音はまだ受験勉強のために起きていた。
えらい、えらいと褒めながら水音の頭を撫でようとして思い切り手を払われた。
水音はハルに矢のような言葉を刺して部屋に戻ってしまう。
いい気分だった酔いがスーッと醒めていく。
先日二ノ宮の父と話をして以来ずっと水音のことを考えていた。
それから俺は彼女のことを女として好意を持っているのだと確信していた。
「バカだな、お前」暁人の呆れ声がハルの心に追い打ちをかける。
水音が触れられたくないほど自分を軽蔑していると知り呆然とした。
「俺、この先いつかは水音と結婚するんだと思ってた・・・」
漠然とした想い。
出会った時は中学生と小学生。もちろんそんなことは考えてなかったけど、いつの間にか水音が大人になったら結婚してこの家族の一員になるんだってなぜかそう思ってた。
「はぁ~。何となく知ってた。多分お袋も」
暁人がやっぱりなというように息を吐いて冷蔵庫から冷えたミネラルウオーターを2本取り出す。
「ほら、これ飲んでちっと頭を冷やせ」
受け取ったペットボトルの水は確かにキンキンに冷えていて胃袋に沁みる。
「水音のことなんだと思ってたんだ?女は小さい時から女なんだぞ。あいつがお前の周りに群がる女たちのことどう思ってたかなんてちょっと想像したらわかりそうなもんだけど」
女は女・・・。
わかっているようで何もわかってなかったのはハルだった。
「水音が大学生になったらデートに誘ってとかーーー」
「今のお前となんて行くわけねーだろ」
「そうか・・・」
二ノ宮の父との話が胸をよぎる。
「お前本気か?水音のこと妹みたいだからとかうちみたいな家族を作りたいからとかそんなこと考えてるんじゃないだろうな」
「そうじゃない!」
水音に対する想いはそんなことじゃない。自分の力全部使って守りたい、慈しみたい、愛を捧げたい。
そして、愛されたい。
「どっちみち今のお前を水音は受け入れない」
暁人の言葉がハルの胸に深く刺さった。
「…わかった」
力が足りなければ認められない。
ーーーだったら誰からも文句が言えない立場になってここに戻ってくればいい。
留学しよう。
かねてから興味のあった分野を学べるいい機会でもある。
必ず結果を残してやる。
胸を張って水音の前に立つ。
そうしてハルはアメリカ留学を決めた。