ボードウォークの恋人たち

あと少し。
もう少しで研究成果を発表できると思った時、暁人からハルに連絡が入った。暁人は母にもハルへの伝言を頼まれたのだという。

『水音、大江医療機器の御曹司とお見合いすることになりそうだ』

ハルはずっと暁人と連絡を取り続けていた。暁人との友情だけでなく、暁人を通じて水音の様子を教えてもらうためでもあった。

「止められないのか?」
『今回はなぜか親父が強引でな。お袋と一緒に止めてみたけど、向こうの親もかなり乗り気で無理そうだ。すまん』

「いや、お前のせいじゃない。無理やりでも何でも今回は自分で止めるさ。見合いはいつ?」
『水音にはまだ言ってないが2週間後の日曜だ。ちょうど大安らしい』

「わかった、連絡サンキューな。お袋さんにもそう伝えてくれ」
『ーーーハル、お袋から伝言もう一つあるんだけど』

「ああ」
『・・・このままだと先に進まなそうだからすぐにでも引き取ってくれていい、って。夫のことなら心配いらないとも言ってたな』

すぐにでも、か。
「ありがたくそうさせてもらうって伝えておいてくれ」

忙しくなる、でも幸せの青い鳥を逃すわけにはいかない。
『マジかー、ホントにあれでいいのか』と電話の向こうで突っ込む親友をハルは明るく笑い飛ばした。
いいのかじゃなくてあれじゃないとダメなんだよ。
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