ボードウォークの恋人たち
「今頃は若いお二人でーーーってホテル自慢の展望ガーデンにいるはずだ。頑張ってこい」
暁人に背中を叩かれ送り出され、展望ガーデンに向かう。


どこだ、振袖姿の水音の姿を探していると、展望ガーデンの脇にあるカフェの奥まった席に座る二ノ宮のご両親とおそらく大江医療機器の社長夫妻の姿が目に入った。

お袋さんがすぐに俺に気が付き笑顔で小さく親指を立てている。
隣に座る二ノ宮のおじさんは一瞬ホッとしたような表情をしたもののすぐにしかめっ面になっていた。

ーーーもしかしたらと思っていたけれど、
二ノ宮のご両親はこのお見合いを成立させる気がないのか、
成立しなくていいと思っているのかもしれない。


そうであれば、
思う存分戦ってやろう。
水音に俺以外と結婚などさせない。

ハルを強気にさせたのは二ノ宮家の後押しと水音への長年にわたる執念に似た愛情。
そもそも水音を逃すつもりなど微塵もない。

見合いに乱入してぶち壊す。
久しぶりに見る水音はすっかり大人の女性になっていて、誰にも見せたくない、触れさせたくないと身体が震え出す。

こみ上げる想いに堪えきれず強引にキスをした。
水音が逃げ出すのは想定内。
追いかけるのはまた今度でいい。まずは住まい探し、就職先への挨拶回りとやることは山ほどあるから。

それからハルは二ノ宮母と兄の協力のもと強引に同居に持ち込んだ。

何度か水音に今までどこで何をしていたのかと問われたが、まだ自分の立場を固めていない自分には何も言うことはできなかった。

もう少し、もう少しだ。


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