ボードウォークの恋人たち
気が付いてしまった。
どうして私が無理やりに近い形で入学早々から生徒会の手伝いをさせられていたのか。

入学式が終わってすぐ生徒会長をしているリュウイチ先輩とその彼女のアカネさんに生徒会に入ってと強引に誘われたのだ。しつこい勧誘に私は断り切れず詩音を道連れにした。

「酷いじゃない、私は生徒会じゃなくてサッカー部のマネージャーをやってみたかったのに」

腕組みして仁王立ちすると兄はあわあわと慌てだした。

「待て、暴力はよくない。落ち着け」

「暴力なんて振るわないし」
ツンっとしてやると「いやいやいや、それ俺じゃないから。リュウイチに指示出したのハルだから」と兄はあっさりゲロした。

「ハル?なんで」

「お前の入学前から俺の、二ノ宮暁人の妹が入学してくるって学校で噂になってたらしいんだ。二ノ宮家の娘で元生徒会長やってた文武両道イケメン御曹司二ノ宮暁人の妹。しかもちょっとかわいいときてる。それをハルが知って拓朗に指示したんだよ。俺は関係ないからな」

「噂くらいなんだって言うの」
私に兄とハルが心配するほどのことはない。全く。
しかも自分で文武両道イケメン御曹司とか言っちゃうバカ兄貴。

確かに二ノ宮家は地元で有名かもしれない。
総合病院を2つといくつかの保育園から老人保健施設まで医療福祉介護の総合医療法人を経営しているし、先祖代々からの土地も有していて不動産関係にも力がある。
そう言う意味で言えば私はお金持ちのお嬢様だ。

兄は確かに見た目もいいとこの息子さんっぽい。
頭はいいし、見た目もそこそこ。人当たりがよくてスポーツもできるとくればモテないはずがない。
実際モテている。まあそれ以上におモテになっていらっしゃるのはいつも兄の近くにいるハルオミさまなんだけど。

兄は偉ぶったところもなくお金持ちの息子にしては真っ当に育っていたと思う。
生徒のみならず教師たちからの評判も良く生徒会の会長は兄、副会長はハルと中高通してお決まりだったらしいし。

対して妹の私、私はと言うとごく普通の子どもだと思う。
見た目は普通。身長はぴったり平均身長。スリーサイズも同様。勉強だけは家の恥になってはいけないからそれなりにがんばってはいたけど。運動神経も人並。
モテないしモテ要素はない。相変わらず胸も残念仕様。

だいたいうちの学年にはアイドルみたいなお姫さまがいるんだよ。
平井るなちゃん。
ハーフかと思うほどの顔立ちに透き通るような肌。
男女問わず皆、るなちゃんの虜になっている。

そして一学年上にはリューイチ先輩の彼女のアカネさんがいる。
ショーッとカットがとてもよく似合う文武両道の長身美女だ。

そんな人たちと比べて私はちゃんとパンピーです。
何の心配もいりません。
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