ボードウォークの恋人たち
「水音はそのままでいいよ。いてくれるだけで十二分に俺の支えになってくれてるから。メシは今まで通りでいいし、勤務がきついときは作らなくていいから。俺も作るしテイクアウトも活用しよう。ああ、でももう少し夜勤の少ない部署に異動してくれると嬉しいな。いや、無理にじゃなくて。ただ俺が帰ってきたときに水音がいないのが堪らなく寂しい時があってさ。眠っててもいいから奥さんにいて欲しいんなーと。気持ちが折れそうになってるときほどノー天気な水音の顔が見たいというかーーー一緒に寝て欲しいし」

「よーするにハルがさみしいからなのね、ぜーんぶ。」
「ははっ、バレたか」

水音の頬をぷにぷにとしていると、二ノ宮の両親が笑っていた。

「忙しすぎて子どもの世話が大変になったらここで同居してもいいんだよ。孫の世話なんて楽しそうだしな」
「そうね。なんなら今すぐ同居でもいいのよ。別に」

同居か、水音の負担が軽くなるのならそれもいいかも・・・とチラリと思っていると
「今すぐなんて絶対ダメだからねっ!」
水音が血相を変えてハルの腕を引っ張っていた。

「ここで同居なんてしたらお父さんとお母さんにハルを取られちゃうじゃん!ハルは私のだからっ」

腕に抱き付くようにしがみついてきた水音の頭を撫でながら脱音にこみ上げる温かい想いにしばし浸る。
この先、どんなことがあってもやっとのことで手に入れたこの温かい身体を手離すことはできない。愛する水音を、二ノ宮の両親を、暁人を大事に守りたい。



ーーー俺が手に入れた家族。



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