ボードウォークの恋人たち
式が終わり二人でガーデンに向かい教会の階段を下りて行くと、参列してくれたみんなからフラワーシャワーが。

歓声と祝福の言葉、笑顔とカメラのフラッシュ。
ハルと一緒に笑顔でお礼を言いながらみんなと視線を合わせていく。

「水ちゃん、おめでとー」
望海さんをはじめとする病棟のスタッフのみなさん。
浜さんの隣には福岡先生の姿もある。隣に立つような関係になれたんだろうか?と目を止めると福岡先生が目立たないようにニヤリと笑い小さく親指を上げるのが見えた。
ほほう、どうやらうまくいったみたい。
落ち着いたら話を聞かせてもらわなくっちゃ。

「みおっ!おめでとう!」
詩音夫婦とリュウさん、なんと琴さんまで。着物姿の艶やかな琴さんが強面イケメンのリュウさんと並ぶ姿は映画のワンシーンのようで明らかに目立っている。

「いいんですか、かなり目立ってますけど」
こっそり聞くと
「いいのよ。リュウとは隠すような関係じゃないし。みーちゃんたち見てたら私もこのまま押しかけ妻になってもいいかなって思ってるくらいよ」
ぱちんと大きなウインクがついてきた。

リュウさんは苦笑しているけど、嫌がってない。
むしろ嬉しそうにも見えるから本当に結婚しちゃうのかも。近い将来スポーツ新聞の紙面が琴さんの結婚報道で賑わうことになるのかもしれない。

私が琴さんと話している間、ハルは詩音から攻撃されていた。

「今度水音を泣かせたらすぐに奪いに行きますからね」
「わかってる。心配かけて申し訳なかった」
「マジでそんなことになったら二度と返しませんから」
「絶対そんなことにはならないよ」

詩音の目にうっすらと涙が浮かんでいるのを見て私の目にも涙がこみ上げてきてしまった。

「しおーん」
「みおー」
詩音の背中に両腕を回して抱き付いてしまう。メイクが落ちてもいい。どうせみんなの注目は新郎のハルと美人女優の琴さんに集まっているだろうし。

えぐえぐっと泣いていると優しく引き離された。
「水音が泣いていいのは俺の胸の中」
ハルが持っていたハンカチで涙と鼻水をぬぐわれていると式場のスタッフさんが飛んできた。
私にハンカチを握らせると
「お写真の前には簡単にメイク直ししますね」と囁いて去って行った。
うん、さすがにもうちょっと我慢せねばね。
引き離された詩音も旦那さまに連れられて木の陰で涙をぬぐってもらっている。
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