ボードウォークの恋人たち
「ええーっと、誤解がないように言っておきますけど、彼は・・・」
「立派な婚約者です!」

ああ?
背後の声に驚いて振りかえる。
私のセリフを乗っ取ったのは今や天敵と言って差し支えないだろうハルだった。

「ハル!何でここに!」

後光が差しそうな満面の笑みでパリッとしたシワひとつないドクターコートのハルが颯爽と現れ私の背後に立っていた。
私を取り囲んでいた女性陣は小さな歓声を上げている。

「何でって今日からここで働くから」

さらりと告げられああそうなのねと頷きそうになってしまったけど、そうじゃない!

「聞いてないんだけど」
奥歯を噛みしめて横目で睨む。

そうか、内科で働くイケメンドクターってハルのことだったのか。

「だって一昨日水音は俺の話を最後まで聞かないで|終わった(・・・・)ら、さっさと着替えてホテルから帰っちゃたからだろ。冷たいよな。俺をホテルの部屋に置き去りとか」

ハルはニヤリと笑った。

終わった(・・・・)ら?

きゃー
黄色い歓声が上がる。

「きゃー、ハル!あんた何てこと言ってんのよ。みなさん、誤解です誤解ですぅー」

慌てて周りの女性陣の腕にすがるけれどみんな私の話なんて聞く気がないらしい。

何が終わったら(・・・・)
どうして着替えたのか、
それと、どうして”ホテル”にいたのか
聞いてくださいー!!!!!

絶対勘違いしてる!
いやー!!!
私がやり捨てたみたいになってるじゃん。


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