ボードウォークの恋人たち
***

深夜3時。疲れた体を引きずって我が城に帰った時には何もする気が起こらなかった。
部屋の電気をつける気にもならない。玄関を入ってすぐにある洗面台の小さなライトだけを灯してなんとかメイクを落とし歯磨きをしてよろよろとベッドに直行。

今夜の夜勤はとても大変だった。夕方から急変が立て続けに起こり、私も対応に必死で。
深夜に何とか次のスタッフに引継ぎをすることができた。そんなわけでとにかく私は心身ともに疲れて果てていた。
メイクを落としてベッドに入ったのだから褒めて欲しい位だ。先月などは玄関で靴も脱がずに座り込んで寝ていたこともあったのだから。


・・・とまあ昨夜はそれから朝までぐっすりと寝たわけなんだけど。
空腹で目覚めた朝9時。
目覚めてびっくり。

狭いながらも就職してゲットした私のお城ともいうこの1Kのアパートの部屋からはベッド以外のほとんどの家具が無くなっていた。
すっからかん。

ど、ど、泥棒っ?

間抜けなことに昨夜のうちに気が付かなかったのはもともと荷物が少なかったうえに帰宅した時に小さな電灯を点けただけで洗面を済ませ寝てしまったから。

それと私の生活導線上に帰宅後の必要なものだけは残されていたこと。
例えば、洗面道具。ベッドの上に置かれたパジャマ兼部屋着。キッチンのテーブルの上に置かれた常温のミネラルウォーターのボトル。

でも、これってどういうこと?!
発狂しそうになったところで一枚のメモを発見した。

『引っ越しました。
新しい部屋はここです。世田谷区✕✕〇〇ー〇2001号室
荷物は全て搬入済。今のこのお部屋は明日で退去することになってます。さっさと移動してね。
母より』

母ー!!
勝手に何してんだ、母ー!

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