ボードウォークの恋人たち
壁に目を向けると、私の私服1日分がハンガーにかけられていた。ネックレスのようにかけられているのは交通系ICカードが入ったネックホルダー付きパスケース。
まるで幼い子供のおつかいのよう。

・・・普通ストラップだよね、どうして小学生みたいに首からかけるタイプなのか、ちょっとした嫌がらせにも見える。

とにかく、とにかく自分の荷物と合流しなくては。

実は盗難防止のためクレジットカードもキャッシュカードも夜勤の時は持ち歩かないようにしていてお財布に入れておらず、現在手持ちの現金も少ししかないのだ。
貴重品を入れておいた衣装ケースも家具と一緒に部屋から無くなっている。

昨日まであったはずの冷蔵庫もない。
このままでは満足な朝ご飯にもありつけない。
・・・お腹減った。

仕方なく身支度を整え、アパートから指定された住所に向かうことにした。
我が城から電車で1つ先の駅。

そのマンションは駅前にそびえ立っておられた。

高級感に怯み迷ったけれど、ホテルのフロントみたいなところがあることに気が付いて恐る恐る中に入って声をかけてみた。

「ハイ、伺っております。二ノ宮水音様ですね。2001号室の。ご案内いたします」

綺麗なお姉さまに案内されたのは最上階。
ワンフロア全てが2001号室だという。

玄関前で案内してくれたお姉さまと別れると、私は恐る恐るインターホンを押した。

「待ってた、水音。遅かったな」
ガチャリと開いたドアから顔を出したのはやっぱりハルだった。
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