ボードウォークの恋人たち
能天気な笑顔に怒りがこみあげてくる。
ギリギリと奥歯を噛みしめていないと暴言を吐いてしまいそうだ。
「荷物、返して」
「水音、お腹空いてる?朝ご飯まだだろ?一緒に食べよう」
ハルは仏頂面の私を気にするそぶりも見せず、ニコニコとしている。
「いいから。早く返してちょうだい。私疲れてるの」
ハルの笑顔に私のイライラが募り腹立たしくてならない。ああやばい、こんなところで大声を出してしまいそうだ。
怒りを抑えるようにおへその奥にぐっと力を入れると、途端にぐううーっと私のお腹が鳴った。
ぎゃー、なんでこんなタイミングに!私のお腹の裏切り者め。
顔をしかめて悔しがる私にハルは嬉しそうに頬を緩めた。
「俺さ、パンケーキ焼けるようになったんだ。食べてみたくないか?」
「え」
ハルがパンケーキ?
あのハルが?
目玉焼き一つ作れなかったハルがパンケーキを焼けるようになったとか、うそでしょ?
昔、うちに泊りに来た時に作ってあげたことがある。
小学生の私が作ったパンケーキをおいしいって褒めてくれたハルを思い出した。
「フルーツと生クリーム。本場のメイプルシロップも付けるけど」
「・・・食べる」
だって大きく開けられた玄関ドアの奥から何だか美味しそうなニオイが漂ってきていたんだもの。食いしん坊の私は抗えなかった、本能の部分で。
「じゃあ入って手を洗え」
「・・・はい」
私はハルに従った。
荷物の話は食べた後でもいいだろう。
決してハルに負けたわけじゃない。
荷物は紙袋一個や二個の話じゃなくて、恐らく配送業者を手配しなければいけないくらいにはあるはずだから、空腹状態で話すよりは少し身体に栄養を回してからの方が良いと思ったからで…パンケーキの甘い誘惑に負けたわけではない。たぶん。
「どうぞ」
ハルが差し出してくれたスリッパは可愛いパステルオレンジ色のふわふわとした肌触り抜群のものだった。
誰の趣味だろうと考えそうになって慌てて否定した。誰の趣味でも私には関係ないんだっけ。
ギリギリと奥歯を噛みしめていないと暴言を吐いてしまいそうだ。
「荷物、返して」
「水音、お腹空いてる?朝ご飯まだだろ?一緒に食べよう」
ハルは仏頂面の私を気にするそぶりも見せず、ニコニコとしている。
「いいから。早く返してちょうだい。私疲れてるの」
ハルの笑顔に私のイライラが募り腹立たしくてならない。ああやばい、こんなところで大声を出してしまいそうだ。
怒りを抑えるようにおへその奥にぐっと力を入れると、途端にぐううーっと私のお腹が鳴った。
ぎゃー、なんでこんなタイミングに!私のお腹の裏切り者め。
顔をしかめて悔しがる私にハルは嬉しそうに頬を緩めた。
「俺さ、パンケーキ焼けるようになったんだ。食べてみたくないか?」
「え」
ハルがパンケーキ?
あのハルが?
目玉焼き一つ作れなかったハルがパンケーキを焼けるようになったとか、うそでしょ?
昔、うちに泊りに来た時に作ってあげたことがある。
小学生の私が作ったパンケーキをおいしいって褒めてくれたハルを思い出した。
「フルーツと生クリーム。本場のメイプルシロップも付けるけど」
「・・・食べる」
だって大きく開けられた玄関ドアの奥から何だか美味しそうなニオイが漂ってきていたんだもの。食いしん坊の私は抗えなかった、本能の部分で。
「じゃあ入って手を洗え」
「・・・はい」
私はハルに従った。
荷物の話は食べた後でもいいだろう。
決してハルに負けたわけじゃない。
荷物は紙袋一個や二個の話じゃなくて、恐らく配送業者を手配しなければいけないくらいにはあるはずだから、空腹状態で話すよりは少し身体に栄養を回してからの方が良いと思ったからで…パンケーキの甘い誘惑に負けたわけではない。たぶん。
「どうぞ」
ハルが差し出してくれたスリッパは可愛いパステルオレンジ色のふわふわとした肌触り抜群のものだった。
誰の趣味だろうと考えそうになって慌てて否定した。誰の趣味でも私には関係ないんだっけ。