ボードウォークの恋人たち
「ハイどうぞ」

目の前に差し出されたのはウッドディッシュに盛り付けられたそれは見事なパンケーキだった。
カフェで出てくるやつじゃないかと思うほどの出来の良さ。

ふわふわの二枚重ねのパンケーキにアーモンドスライスの乗った生クリーム、バナナとイチゴとラズベリーが添えられて彩りにミントの葉まで。
メイプルシロップはしずく型の小さなソースボウルに入っているし、なんておしゃれなんだろう。

「すごい・・・」

感嘆すると「おう」とハルがちょっと嬉しそうに目を細めて私の隣に座る。
二つ持ったマグカップの一つを私の前に置きもう一つは自分の前に置いた。

「食べて、水音」

美しい出来のパンケーキを前に驚きで固まった私の額にハルの人差し指がツンと触れ私はハッと我に返る。

甘い香りが私の鼻腔をくすぐり再びお腹がぐぐぐーっと鳴り出した。

「ほらお腹が催促してるから」クスクスと笑われて本当に恥ずかしい。
「笑わないでっ」
プンっとして「いただきます!」とむくれながらナイフとフォークを手に取った。

そっとひとかけらを持ち上げて口に運ぶ。

美味しい!!
甘すぎなくて適度な弾力。焼き加減も絶妙で驚きしかない。
見た目だけじゃなくて味もいい。「これ、ホントにハルが焼いたの?」

「そうだよ」

そうだよってーーーマジか。
「美味しい。すごく美味しい」

「水音が喜んでくれたならよかった」
ハルは満足そうにマグカップを口元に運んだ。

「ハルも紅茶?」
「そう。水音はコーヒーより紅茶が好きだったよね?」

「うん、昔はね。でも今はどっちも好きよ。うちの職場の休憩時間の定番はみんなコーヒーみたいで。もらって飲んでるうちに飲めるようになって。1年たったら好きになってた」

「・・・そうか」

それきりなぜかハルが黙ったから私も黙って食べることに集中した。

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