ボードウォークの恋人たち
「福岡先生も甘いものがお好きなんですか?」
浜さんが三つ目のショコラケーキを口にした福岡先生のカップにコーヒーを継ぎ足しながら聞いた。
さすが浜さん、何気なくお代わりを入れるタイミングも素晴らしい。気配り上手。

「ええ。一服するときにはひと口でいいから食べたくなりますね。身体が欲するというか。だからそれを知っている友人がこうして時々差し入れしてくれて。浜さんもよかったらもっとたくさん食べて下さい。気に入ってくれたらまた持ってきますよ」
先生の浜さんに向ける目がちょっと緩い。

へぇ~。ふぅん。
さっきから福岡先生の視線はずーっと浜さんに釘付けだ。
わかるわかる、浜さん気取ってないし優しいし、おまけにしっかりしている癒し系美人だし。

今年32才になる浜さんは独身。
見た目はアラサーにはとても見えない若々しさ、そして中身は優しくて上品で落ち着いているというまるで理想の女性を具現化したようなひとだ。
もちろん患者さんにも大人気で「うちの息子の嫁に」「うちの孫の嫁に」とお見合いの話が絶えないうちの病棟の看板ナースのひとり。
そんなこと浜さんはちらりとも興味を示さないんだけど。

福岡先生も浜さんと同じくらいの年齢のはず。
独身だと思う、たぶん。
あまりプライベートなことは知らないんだけど、身体が大きく優しそうなドクターだ。

もしかして浜さんに会いたくて仮眠前のラウンドと言いながらここに顔を出したのかも。福岡先生の浜さんを見る目にそんな気がする。
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