ボードウォークの恋人たち
「今度は私がお代わり淹れてきまーす」
望海さんが空になったコーヒーサーバーを持って席を立ち、私がブラウニーを口に運んだところでナースコールが鳴った。
「私が出るからいいわよ。水ちゃんは食べてなさいね」
素早く立ち上がった浜さんが私にウインクしてあっという間に出て行ってしまった。
福岡先生の目的が浜さんだったとしたらちょっといたたまれない。なんかすみません、と心の中で福岡先生に謝った。
浜さんの後ろ姿を名残惜しそうに見送っていた福岡先生が不意に振り返って私を見てにこりと笑う。
「二ノ宮さん、大江とお見合いしたんだってね」
予想外の言葉に思わずごくりと喉が鳴った。
「なぜそれを?」
「大江は俺の友人」
福岡先生は含み笑いを浮かべる。
そう言う事か。
「すみませんでした。何だかいろいろ・・・」
事情がどうであれお見合い場所に男が来るなんてとんだ修羅場だ。あれから大江さんには電話で事情を話して謝罪して許してもらっていたけど。
ぺこりと頭を下げた私に福岡先生はブンブンと手を振った。
「俺に謝る必要ないって。むしろお礼を言いたいって思ってたんだ」
「お礼?もしかして大江さんのプライベートなその辺の事情もご存知ですか?」
「そうなんだ。ずっと大江のことは気になっててね」
実は大江さんには大切な人がいる。私の事情を話した時、大江さんサイドの事情も聞いたのだった。
大江さんも父親である自社の社長に見合いを強制されていたのだという。
断ってもいいから、というところまで同じだと言うから驚きだ。
「二ノ宮のご令嬢との見合いが決まって大江がやっと重い腰を上げたんだからさ。大江だって大江の彼女だっていつまでも結論出さないわけにはいかなかっただろうからね。結果的に二ノ宮さんと大江のあのお見合いは彼らにとっていいきっかけになった」
「だったらいいんですけど」
「いや、二ノ宮さんだって二ノ宮さん側の都合ってものがあるだろうし。見合いなんかして恋人にずいぶん心配かけちゃったんじゃないの?」
望海さんが空になったコーヒーサーバーを持って席を立ち、私がブラウニーを口に運んだところでナースコールが鳴った。
「私が出るからいいわよ。水ちゃんは食べてなさいね」
素早く立ち上がった浜さんが私にウインクしてあっという間に出て行ってしまった。
福岡先生の目的が浜さんだったとしたらちょっといたたまれない。なんかすみません、と心の中で福岡先生に謝った。
浜さんの後ろ姿を名残惜しそうに見送っていた福岡先生が不意に振り返って私を見てにこりと笑う。
「二ノ宮さん、大江とお見合いしたんだってね」
予想外の言葉に思わずごくりと喉が鳴った。
「なぜそれを?」
「大江は俺の友人」
福岡先生は含み笑いを浮かべる。
そう言う事か。
「すみませんでした。何だかいろいろ・・・」
事情がどうであれお見合い場所に男が来るなんてとんだ修羅場だ。あれから大江さんには電話で事情を話して謝罪して許してもらっていたけど。
ぺこりと頭を下げた私に福岡先生はブンブンと手を振った。
「俺に謝る必要ないって。むしろお礼を言いたいって思ってたんだ」
「お礼?もしかして大江さんのプライベートなその辺の事情もご存知ですか?」
「そうなんだ。ずっと大江のことは気になっててね」
実は大江さんには大切な人がいる。私の事情を話した時、大江さんサイドの事情も聞いたのだった。
大江さんも父親である自社の社長に見合いを強制されていたのだという。
断ってもいいから、というところまで同じだと言うから驚きだ。
「二ノ宮のご令嬢との見合いが決まって大江がやっと重い腰を上げたんだからさ。大江だって大江の彼女だっていつまでも結論出さないわけにはいかなかっただろうからね。結果的に二ノ宮さんと大江のあのお見合いは彼らにとっていいきっかけになった」
「だったらいいんですけど」
「いや、二ノ宮さんだって二ノ宮さん側の都合ってものがあるだろうし。見合いなんかして恋人にずいぶん心配かけちゃったんじゃないの?」