ボードウォークの恋人たち
「そう言うと思ってたけどな、俺は絶対に譲らないぞ。お前はここにいる、そう決まったんだよ。もうアパートなんて探すな」

「横暴だ、本物の兄じゃないくせに」

「お前の兄でたまるか。そんなことより水音、お前さ、前に住んでたとこの家賃いくらだったんだよ」

「え、えーっと・・・」

金額を伝えると、ハルはゆっくりと頷いた。
「じゃあそれの半分の金額を毎月俺に支払えばいい。それをお前の家賃にする。残りはここを出て行くために貯金しとけ。それならいいだろ」

「いや、ダメでしょ。そんな値段じゃ」
どう考えても安すぎる。

「うるさい、もう黙って。そもそもここは俺一人じゃ広すぎる。水音がいなくなっても俺がここの家賃を支払うのは同じ。だから水音はその値段でいい。これ以上の譲歩はない、以上」

異論は認めないというハルの態度。

「だいたいお前、ここ出てどこに行くつもりだ。現状ここ以外に住むトコないだろうが」
私は言葉に詰まる。
いや、それはそうなんだけど。

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