ボードウォークの恋人たち
「そこに書いておいたけど、明日は大学に呼ばれてるから夕飯いらない」
食後のお茶を飲んでいるとハルがキッチンに貼られた二人のスケジュール表を見ながら言った。
ハルの勤務予定や私の勤務表が書き込まれている。お互いのスマホにもスケジュール管理アプリを入れた。
「了解、了解」
私も明日の夜は大江さんと出かけるからちょうどいい。
待ち合わせは最近出来たばかりのイタリアンレストラン。星が付いているお店で修業をしたシェフが開いたお店で評判がいいらしいから料理の方も楽しみだったりする。
「私は明後日まで日勤したら次は深夜勤務だし、その後ハルは出張だからしばらくすれ違いだね」
「そうだな。次に一緒に食べるのは来週か」
こうして考えてみると一緒に暮らしていてもハルと一緒に過ごす時間はあまり多くないのかも。
「一緒に食べる夕飯のメニューはリクエストを受け付ます。お好きなものをどうぞおっしゃて下さいませ」
「んー、じゃあ考えとく。何でもいい?」
「いいよ。でもあんまり凝ったものは無理だからね、カタカナの難しい聞いたことない名前のやつとか。高度なのは勘弁して」
「わかってるって。レストランで食べるようなのじゃない方がいいよ。おばさんが作ってくれてたものの方が好きだ」
頷いているハルの笑みに私も昔を思い出す。
いつも美味しそうに食べていたハルを。