ボードウォークの恋人たち
***

約束の時間より早くにお店に行ったのに大江さんは先に来ていた。

「お待たせしました」

「いいえ、まだ時間前ですよ。私が早く着きすぎたんです。この近くで商談があったもので終わってそのまま来たら早く着いてしまっただけですからお気になさらず」

大江さんはにこやかに私を迎えてくれた。

ふう。
やっぱりイケメン。大江さんは今日もイケメン。ハルとタイプは違うけど、大江さんもとってもイケメンだ。
銀縁の眼鏡も短くセットされた黒髪も細身のスーツもよくお似合いで。
クールに見えてその穏やかな笑顔は実に眼福。

「早速ですけど、先日はご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」

とにかく、大江さんには直接謝らないといけないと思っていた。
私たちのお見合いのあの日、ハルが乱入してきたことで見合いを壊したのは私なのだから謝罪するのはこちらの方だ。

あの日すぐに「自分にも大切な人がいてお見合いをしたけれどこの話を受けるわけにはいかない」とうちの両親に言ってくれたのだ。

「いえ、私も申し訳なかったと思っています。あなたを私の事情に巻き込まずに済んであれでよかったんですよ」

そうなのかなあ。
「福岡にも言われました。いいきっかけになったんじゃないかって」

「上手くいったんですね?」

「はい」
大江さんはにっこりと笑顔を作った。

「もしかしたらプロポーズも?」

「はい。了承してもらえました。しばらくは別居婚ですけど」
そう言った大江さんの笑顔は晴れやかだった。

「おめでとうございます!そこまで福岡先生は教えてくれなかったし。でも直接聞くと嬉しさ倍増です。今夜はお祝いですね!乾杯しましょう」

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