ボードウォークの恋人たち
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「お帰りなさい」
「ただいま、水音。はい、お土産」
ハルから手渡されたのは明太子が入った紙袋。
九州で行われた出張のお土産は明太子だった。
「わぁ、いろんなお店のを買ってきてくれたんだね」
袋の中には違うお店の明太子が何個も入っている。
「店によって味が違うらしいからね。せっかくだから食べ比べするのも楽しいかと思って」
「そうだね。そのままご飯のお供に、それから明太子スパゲッティ、明太ポテトサラダ、明太マヨディップの野菜スティック。ううー、楽しみ~」
明太子大好きな私は歌いだしそうなほど嬉しい。
明日は朝明太子のお茶づけ食べてお昼用の明太子のおにぎりを作って仕事に行こうかな。
「それだけ喜んでくれると買ってきたかいがあるね」
ハルのキラキラした笑顔を見るのも4日ぶり。
うん、やっぱりカッコいい。
「お疲れさま、ハル。お風呂準備できてるよ。入ってスッキリしてきてよ。お風呂出たらご飯一緒に食べよう」
明太子を持ってキッチンに向かおうとした私の背中が急に温かくなる。
こんっとハルの頭が私の背中にくっついている。
「どうしたの?」
ちょっとした触れ合いに驚き戸惑い固まってしまう。
「うん、ちょっと感動した。4日振りってこともあったけど、いいね誰かが待っててくれている家って」
私の肩に額をくっつけるようにしてハルが呟いた。
昔は『ただいま』『お帰り』のあいさつの後、ぴょんっとハルに飛び付いて受け止めてもらったりハグしてもらったりしたものだ。それをハルが思い出したのかもしれない。
うん、お兄ちゃんの言った通り。ハルは家庭に憧れているらしい。
こんな妹でよかったらハルが飽きるまでお相手しましょうか。
すぐに「風呂に入って来る」とハルは離れて行った。
束の間感じた背中のぬくもりが無くなってちょっと寂しく感じたのはハルには秘密。
さあ、ご飯の支度をしようっと。