ボードウォークの恋人たち
「同居も初めは上手くいってたと思うの。でもやっぱり無理だった。ハルの近くにいると安らげない。いつもそわそわざわざわして。その上、ただの同居人だって言ってるのに周りは勝手に騒いで」
「ハルさんはなんて言ってるの?言ったんでしょ、女が来て迷惑してるって」
「言ってない」
「なにそれ」
詩音の舌打ちが聞こえた。
「だって言っても仕方ないもの」
「わかった、もういいよ。水音は私が守る。私のアトリエにおいでよ。洋服だって靴だって私のがあるから。ただ今まだリノベーション工事中なの。入居までもう少し時間がかかるからそれまではうちに来ればいい」
男前な詩音の言葉に涙が零れそうになる。
なんて頼りになる素敵な親友だろう。
「ありがと。でも、タツヤの了解は取らなくていいの?」
「いいの、いいの。アトリエは私の財産だし、水音のことでタツヤが反対するとは思えない。大丈夫よ。水音は気にしない、気にしない」
大丈夫と笑う詩音の笑顔の向こうにタツヤの笑顔が浮かんで見える。
詩音の愛する夫のタツヤは私と詩音の高校時代の同級生でもある。大学を卒業して2年で結婚した詩音とタツヤ。
24才のタツヤが結婚には早いという人もいるけれど、17才から付き合いはじめてもう8年だし知り合ってからならもう12年。おまけに二人とも経済的にも自立している。
タツヤは大学在学中に兄と共にIT関係の会社を起業していてかなりうまくいっている。
詩音は高校在学中からその才能を買われ今やその世界では有名な画家だ。
おまけに今私たちが飲んでいるこのバーはもともと詩音の祖母がオーナーをしていた店で4年前に詩音が継いでいた。
財界の重鎮も訪れるというこのバーは一見さんお断りで詩音と私の隠れ家のような場所だ。
「おい、そろそろ帰らなくていいのか。明日の仕事は?」
突然、私の目の前にミネラルウォーターの入ったグラスが置かれた。
顔を上げると真顔のリュウさんが腕組みをして立っている。
うわっ、こわっ。
「明日は夕方からだもん。まだ大丈夫」
「散々飲んだだろ。知ってるぞ」
腕組みをしたままジロリと睨まれ、ひぃっと声を上げそうになったけどすんでのところで堪えた。
「俺の目を盗んで陽太にオーダーしたんだろうが。俺が気がつかないはずないだろ」
「ば、ばれてる」
「当たり前だ。水音はもうアルコールは終わり。水飲んどけ」
「詩音はいいのに、私だけ水?ずるい、差別」
詩音が私よりずっとアルコールに強いのはわかっているけどつい悪態をついてしまう。それは怖い態度だけれど私たちのことを理解してくれている大人なリュウさんに対する甘えだ。
「ハルさんはなんて言ってるの?言ったんでしょ、女が来て迷惑してるって」
「言ってない」
「なにそれ」
詩音の舌打ちが聞こえた。
「だって言っても仕方ないもの」
「わかった、もういいよ。水音は私が守る。私のアトリエにおいでよ。洋服だって靴だって私のがあるから。ただ今まだリノベーション工事中なの。入居までもう少し時間がかかるからそれまではうちに来ればいい」
男前な詩音の言葉に涙が零れそうになる。
なんて頼りになる素敵な親友だろう。
「ありがと。でも、タツヤの了解は取らなくていいの?」
「いいの、いいの。アトリエは私の財産だし、水音のことでタツヤが反対するとは思えない。大丈夫よ。水音は気にしない、気にしない」
大丈夫と笑う詩音の笑顔の向こうにタツヤの笑顔が浮かんで見える。
詩音の愛する夫のタツヤは私と詩音の高校時代の同級生でもある。大学を卒業して2年で結婚した詩音とタツヤ。
24才のタツヤが結婚には早いという人もいるけれど、17才から付き合いはじめてもう8年だし知り合ってからならもう12年。おまけに二人とも経済的にも自立している。
タツヤは大学在学中に兄と共にIT関係の会社を起業していてかなりうまくいっている。
詩音は高校在学中からその才能を買われ今やその世界では有名な画家だ。
おまけに今私たちが飲んでいるこのバーはもともと詩音の祖母がオーナーをしていた店で4年前に詩音が継いでいた。
財界の重鎮も訪れるというこのバーは一見さんお断りで詩音と私の隠れ家のような場所だ。
「おい、そろそろ帰らなくていいのか。明日の仕事は?」
突然、私の目の前にミネラルウォーターの入ったグラスが置かれた。
顔を上げると真顔のリュウさんが腕組みをして立っている。
うわっ、こわっ。
「明日は夕方からだもん。まだ大丈夫」
「散々飲んだだろ。知ってるぞ」
腕組みをしたままジロリと睨まれ、ひぃっと声を上げそうになったけどすんでのところで堪えた。
「俺の目を盗んで陽太にオーダーしたんだろうが。俺が気がつかないはずないだろ」
「ば、ばれてる」
「当たり前だ。水音はもうアルコールは終わり。水飲んどけ」
「詩音はいいのに、私だけ水?ずるい、差別」
詩音が私よりずっとアルコールに強いのはわかっているけどつい悪態をついてしまう。それは怖い態度だけれど私たちのことを理解してくれている大人なリュウさんに対する甘えだ。