ウエディングドレスを着せてやろう
 ちょっとひとっ走りコンビニで牛乳買ってきて、くらいの気安さだったので、思わず、頷きそうになったが、なんとかとどまる。

「ちょっと座っててくれればいいのよ。
 新しいワンピース買ってあげるから。

 それ着て、ほら、あんた、あの海沿いのホテルのアフタヌーンティーセット食べたいって言ってたじゃない。

 黙って、あれ食べてるだけでいいから」

 そんな軽い感じに言ってくる志木子の横から、赤子を手に父、尚成(ひさのり)が苦笑いして言ってくる。

「いや、すまん、花鈴。
 ちょっと呑み屋で出会った大学時代の友人に頼まれて。

 そこんちの娘さんが見合いすることになってたんだが、妊娠してることがわかって。

 急に結婚することになったんで、誰か代わりにご紹介しますって言っちゃったらしいんだよ。

 お宅の花鈴ちゃんなら申し分ないって言われて。
 酒もご馳走になっちゃってなー」

 ……呑み屋で酒代(さかだい)がわりに娘を売り渡すとはこれ如何(いか)に。

 ってか、申し分ありありだと思いますけどね~。
< 102 / 373 >

この作品をシェア

pagetop