ウエディングドレスを着せてやろう
 


 レストランで光一とサイダーなど飲んだあと、花鈴たちは劇場に入ったが。

 花鈴は、初めて見た人情芝居にすっかりハマッてしまった。

 常連のお客さんたちの雰囲気に乗せられた花鈴は、よく笑って泣いた。

 そして、公演終了後、出てきて知り合いと話し出した、少し年配の女形の人が普通にイケメンで驚く。

 さっきまで、確かに色っぽい女の人だったのにっ。

 ていうか、あんな普通に格好いいおじさまが、あんな艶っぽく変身できるのに。

 なんか私、女としてダメな感じが……とちょっぴり落ち込んでいると、

「どうした。
 面白くなかったか」
と光一が斜め後ろから訊いてきた。

「あ、いえ。
 めちゃくちゃ面白かったです。

 ちょっとハマりそうです」
と言いながら、チラと見ると、人の良さそうなイケメンのおじさまは若い綺麗な女の人とちょっと顔の濃いイケメンの人と話していた。
< 190 / 373 >

この作品をシェア

pagetop