ウエディングドレスを着せてやろう
「どんな店に行きたいんだ?
 お前の行きたいところなら、何処でもいいぞ」

 ただ真面目で不器用だから、そんな風に言ってくるのだろうと思いながらも、それ、なかなかの殺し文句だな、と花鈴は思っていた。

 此処は、いえ、やっぱり、専務の行きたいところなら何処でもいいです、と返すべきなのか。

 いや、それでは話がまとまらない、と思った花鈴は、思ったままを口にしてみた。

「そういう雑誌やネットで見た評判のところじゃなくて。
 専務がいつも行くようなお店に行きたいです。

 って、高いですよね、きっと」

 どうせなら、普段の光一のことを知りたいと思ったのだが、と思う花鈴に、

「いや、別に高くはない……」
と言ったあとで、光一は少し考え、

「わかった。
 じゃあ、ちょっと行ってみるか。

 屋台っぽい雰囲気の、気軽に楽しめる店がこの近くにあるんだ」

「あっ、はいっ」
と花鈴は笑って言った。

 そういうのだったら、気負わずにすみそうだと思ったのだ。



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