ウエディングドレスを着せてやろう
「ありがとう。
 だが、気にするな。

 俺は今日は、最初から呑むつもりはなかったんだ」
と言ってくる光一に、

「何故ですか?」
と訊いてみた。

 光一は一瞬、黙ったあとで、こちらを見つめ、
「酒を呑むと料理の味がわからなくなるからな」
と言ってきた。

 ぽとり、と花鈴は甘辛い手羽先を落としそうになる。

 本気だっ。

 この人、料理に対して、本気だっ。

 私もじっくり料理に向き合わなければっ、と花鈴は手羽先を真剣に食べ始めた。

 いつもなら、ちょっと肉がついた状態で残すのに、とても綺麗に食べてみた。

 すると、そんな花鈴を観察していたらしい光一が言ってくる。

「西辻、今、酔ってるか?」

「あっ、はいっ」

「……酔ってないと言い出したら、酔っている、とよく言うが。
 自ら、ハッキリ酔っている、という場合はどうなんだろうな」

 そう呟いたあとで、光一は言う。
< 198 / 373 >

この作品をシェア

pagetop