ウエディングドレスを着せてやろう
最終面接の日、花鈴たちは会議室で待たされていた。
緊張して待つ花鈴たちを人事部長の桂葉がひとりずつ、役員たちの居る場所に連れていってくれるらしい。
この会社は最終まで来て落ちる人間はほとんど居ないと聞いている。
そのせいか、会議室の中は和気あいあいとした感じで、みんな、
「頑張って」
と連れていかれる人たちに向かい、声をかけたりしていた。
うーむ。
しかし、そのほとんど居ないうちのひとりになりたくないんだが……と思ったとき、小柄で白髪混じりの桂葉が花鈴を迎えに来た。
さっきまで桂葉の後ろを強張った顔で付いていく人たちを、人買いに連れてかれるみたいだなあ、と思って眺めていたのだが。
今、まさに自分がこの人の良さそうな人買いに買われようとしていた。
名前を呼ばれて立ち上がると、
「頑張って」
とさっき仲良くなった愛が小声で声をかけてくれる。
愛は、花鈴の姉が小学生のとき行ったキャンプで、同じ班だった人の従姉だった。
いや、待っている間、暇なので、お互いの家の話をしているうちに、そんな蜘蛛の糸より細そうな縁が発覚したのだ。
だが、そんな何処がつながっているんだかわからないご縁でも、こんな場所では嬉しい。
二人で微笑み合い、他の人にも励まされながら、花鈴は最終面接の場所に向かった。