ウエディングドレスを着せてやろう
花鈴の心の叫びが届いたのか、光一の母の屋敷を出る前に、詩織が電話してきた。
「あら、専務のおうちなの。
それはそれはお邪魔様」
いや、専務のおうちじゃなくて、お母様のおうちなんですけどね。
……っていうか、お母様のおうちってなんなんですかね?
専務の子どもの頃のお部屋とかありましたけど。
もしかして、お父様のおうち、家族で住むおうちとかいろいろあって。
そのすべてに専務のお部屋があるとか?
お母様はサンダルさえかじらなきゃいい嫁だと言ってくださるけど、家の格が違いすぎませんかっ?
「いやいや、俺を支えるが抜けてるぞ」
と光一が言ってきそうなことを考えながら、不安に思う。
詩織が言ってきた。