ウエディングドレスを着せてやろう
「は?」

「名前で呼んでくれって言われたのに、呼べないんですよ~。
 恥ずかしくて」
と言ってみたが、

「まあ、それもいいんじゃないの? 初々しくて。
 あ、斎藤さん来た」

 じゃあね~と詩織は、さっさと切ってしまう。

 ……ほんとうに暇つぶしだったんだな、と思う花鈴の許に光一がやってきた。

「堀口か。
 なんの用だ?」

 さっきから、光一の方を窺いながら話していたのに気づいていたのだろう。

 自分の話だとわかっているようで、そう訊いてくる。

 いえいえ。
 まあまあ、はいはい、とよくわからないことを言って誤魔化した。

 そのあと、二人で食事をし、ちょっとドライブなどして、家に帰ったが、花鈴は極力、光一に呼びかけるのを避けていた。

 名前で呼ぶの、恥ずかしいし。

 かと言って、今更、専務というのも怒られそうだし。

 なんとか名前を呼ばないで済むようにしながら、自宅まで着いたときには、余計な気を使って、疲れ切っていた。

「あ、ありがとうございました」
と言って降りようとしたが、ドアが開かない。
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