ウエディングドレスを着せてやろう
 なんでだ?

 運賃を払わず、タクシーに鍵かけられたみたいになってるが。

 いや、タクシー、そんなことしないと思うが……と思いながら振り向くと、光一は本当に花鈴が開けられないよう、ドアにロックをかけていた。

 花鈴を見つめ、言ってくる。

「……帰したくないな、と思いながら、家の前まで送ってきてしまった。

 帰るのか」

 帰るのか、と問う光一の背後には、明かりのついた花鈴の家がある。

 えーと。
 普通、そういうことは、此処に来る前に言いませんかね?

 いえ、そう言われたからって、ひょいひょい付いてはいかないですが……。

 光一は、そこでいきなり視線をそらし、

「見つめるな。
 帰したくなくなるじゃないか」
とまた言う。
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