ウエディングドレスを着せてやろう
 そう言われても、今にもエンジン音を聞きつけたお母さんとかが、ハルを抱いて、
「あら、おかえり~」
とか言って現れそうなんですけど、と花鈴はチラと光一の後ろの我が家を窺おうとしたが、ひっ、と息を呑む。

 光一の後ろに人が立っていたからだ。

 兄かと思ったが違った。

 安芸だった。

 それに気づいた光一が車を降りる。

「何故、此処に居るんですか、安芸さん」

 そう光一が文句を言った瞬間、安芸が光一の代わりに車に乗り込み、発進させた。

 ええっ?
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