ウエディングドレスを着せてやろう
 見る見る遠ざかる光一を振り返り、また、ええっ? と思う。

「買ったんだ、ウエディングドレス」

 唐突にそんなことを言う安芸の声が聞こえた。

 はい? と花鈴は振り返る。

「着てみせて欲しい。
 ……君が本気で光一を好きなのは、本当は最初からわかってた」

 そうなんですか。
 私はわかっていませんでしたが……。

「最後に一度、僕と写真を撮ってくれないか?」

「え」

「光一と撮ったみたいに、ウエディングドレスを着て僕と写真を撮ってくれないか?」

 前を見たまま、真剣な口調で安芸は言ってくる。

「……撮れません」

 花鈴はそう言ったあとで、沈黙した。
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