ウエディングドレスを着せてやろう
「ウエディングドレスを買ったんだ」

 安芸は光一に言う。

「偽物のウエディングドレスに偽物の写真でもいいから、花鈴ちゃんと撮りたくて」

「写真でも撮らせない」

 そう安芸を見据えて、光一は言った。

「本物のウエディングドレスも、偽物のウエディングドレスも、花鈴に着せていいのは俺だけだから」

 いやいや、偽物はもういりませんよと思ったのだが、泣いてしまった。

「……なんだろうなあ」
と安芸が呟くように言ってくる。

「勇気を出してみたけど、お前らをまとめるのに一役買っただけじゃないか。
 ま、僕の運命の相手は花鈴ちゃんじゃなかったってことなんだろうな」

 俯いて、安芸はしばらく黙っていたが、やがて、顔を上げて言ってきた。

「もういらなくなったから、やろうか? ウエディングドレス」

 いえ、いりません、と二人で苦笑いして断った。
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