ウエディングドレスを着せてやろう
 安芸はまだその辺を流していたさっきのタクシーに乗って去っていった。

「あっ、この間のお客さんっ、今度はどの車を追いますっ?」
と言われながら。

 夜の街に走り去るタクシーを見ながら、光一が呟く。

「この間のコンパには安芸さん、間に合わなかったけど。
 今度、高倉さんがいい人紹介してくれるといいな」

「あの人、忍者かと思ってたんですけど、実は結婚紹介所の人なんですかね?」

 なにが忍者だ、と笑ったあとで、光一は花鈴の手を握ってきた。

「ちょうどよかったな」
と言って、花鈴を見る。

「帰したくないと思いながら、家の前まで連れていってしまったから、此処から連れ去るのは難しいかなと思ってたんだが」

 ……これで連れて逃げられる、と言って、光一は少し身を乗り出し、キスしてきた。

 

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