ウエディングドレスを着せてやろう
次の日の昼休み、光一は秘書室長の瀬尾に連れられて、リラクゼーションルームに来ていた。
自分が行くと、みんなが休憩できないかと思ってあまり覗かないのだが。
「たまにはご視察されては?」
と言われたからだ。
そうか、花鈴も居るかもしれないしな、と思って、ひょいと覗くと、花鈴が居た。
いや、広いリラクゼーションルームの中に、花鈴がひとり、こちらに背を向けて立っていた。
あのウエディングドレスを着て――。
花鈴は誰も居ないそこで、小声でひとりでしゃべってた。
ついに箱の中から自分には見えない宇宙人でも出て来たのかと思ったが、違った。
パーテーションや椅子の陰に、人がたくさん潜んでいるようだった。
気配を感じる。
そのとき、
「どっち見てんのよっ。
専務来たわよっ」
と詩織の声がパーテーションの陰から聞こえてきた。
しっし、と詩織のものらしい手が花鈴を払っている。