ウエディングドレスを着せてやろう
 



「失礼します」
と花鈴がその部屋に入ると、窓を背に座っていたおじさんたちが一斉に顔を上げた。

 おお、緊張がピークにっ、と思ったとき、その男と目が合った。

 他はみな、おじさんなのに、彼だけが若いイケメンだったが。

 彼の前にあるプレートには専務と書いてあった。

 そのイケメン専務、巽光一(たつみ こういち)は手許にある、履歴書のコピーを見、こちらを見、またコピーを見た。

 そこで、光一の横に居た白いスーツを着てチキンを売ってそうなおじさんが、ははは、と笑う。

「君はずいぶん、写真写りが悪いんだね」

 そう花鈴に話しかけてきた。

 どうやらこのおじさんが社長のようだ。

 それは褒め言葉なのか……?
と迷いながらも、

「ありがとうございます」
と花鈴は頭を下げた。

 だが、目は社長ではなく、光一を見ていた。

 花鈴と光一は警戒しながら、お互いの顔を窺っていたが。

 派手にざわついている人たちも居た。

 一部の役員の方々だ。

 光一がしていたように、何度も履歴書と花鈴を見比べている。

 あまりの写真写りの悪さに驚いて、というわけではないようだ。

 ……嫌な予感がする、と花鈴が思ったとき、光一が立ち上がり、こちらに向かい、やってきた。
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