ウエディングドレスを着せてやろう
「あ、ねえ。
 さっきの話だけどさ。

 ラブラブな雰囲気って言っても、社内なんだし。

 あらっ、この二人、実はなにかあるのかしらって感じを(かも)し出せばいいだけなんでしょ?

 キスのひとつもしてみればいいじゃない。
 グッと距離が縮まるわよ」

 ん?
 幻聴だろうかな?

 今、なんと……?

 なにか今、とんでもない言葉が聞こえてきた気がするんだが、と思いながら、花鈴は訊き返す。

「今、なんて言いました? 堀口さん」

「専務とキスのひとつもしてみればいいじゃない」

「……堀口さんはそんな簡単にキスとかできる人なんですか?」

「なによ、堅いわね、あんた」

「できるんですか?」
と本当にそんな人種が居るのかと思い、繰り返し聞いてしまい、

「追求厳しいわね……」
といつも光一に対して自分が思っていることを言われてしまう。

 だが、
「……できないわよ。
 できてたら、彼氏くらい居るわよ、今頃」

 詩織がそう恥ずかしそうに言ってきたので、笑ってしまった。
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