ウエディングドレスを着せてやろう
「これです」
と花鈴はロッカーの上の棚にあるブランケットを出してきた。

「もふもふなんです」
と光一に差し出すと、光一は、そっとそのブランケットに触ってみていた。

「うん。
 いい触り心地だな」
と頷く。

 大事なブランケットを褒められて嬉しかった花鈴は笑い、
「これに触っているといつでも何処でも落ち着けるんです」
と光一に教えた。

「……昔から大切にしてるとかなのか?」

「いえいえ。
 入社するちょっと前に、駅近くのデッカイ雑貨屋さんで見つけたんです。

 ……すみません。
 いいエピソードじゃなくて」
と花鈴は苦笑いしたあとで、

「なにかいいエピソード、作ってみましょうか?」
と光一を見上げて言った。

 誰も居ない狭いロッカールームで、二人きり。

 しかも、花鈴の大事なもふもふを一緒に握っている。

 なんだか、いつもより光一との距離が近い感じがして、そんな軽口を叩いてみたが、光一は、

「いや、いい。
 なんだかわからない不思議な話が出来上がりそうだから。

 宇宙船から凶悪なウサギが降りてきて、もふもふを渡してくれたとか言い出しそうだ」
と眉をひそめて見せる。

 笑ってしまった。
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